令和3年度水産白書概要の解説:①批判的に白書を見る

久々の更新です。

本日からは令和3年度水産白書概要版を基に話を進めます。

ダウンロードはこちらから可能です。(https://www.jfa.maff.go.jp/j/kikaku/wpaper/R3/220603_3.html)

今年の水産白書概要1ページ目に新たな水産基本計画の概要がございますが、計画について素人目線であると「本当に達成可能な目標を掲げているのかな」と思う内容でした。しかし白書の1ページ目に出るということはそれだけ大事なトピックでございますので、こちらについて解説していきたいと思います。

1.水産基本計画について

水産基本法は水産基本計画(過去記事参照:https://suisangakusyu.amebaownd.com/posts/6888615?categoryIds=1810597)に則って策定されます。主に達成したい目標は5つです。

①.水産資源管理の増強(TAC管理魚種の増大、大臣許可漁業にIQ制度導入)

②.漁業・養殖業の人材育成、輸出拡大やマーケットイン養殖の推進による儲かる化

③.漁村の活性化(6次産業化等)、そのための国内水産物の消費拡大

④.環境配慮、東日本大震災の水産物風評被害対策

⑤.水産物の自給率を食用魚介類で令和2年度で57%のところ94%まで引き上げる(非食用を含めた水産物全体では55%→76%)

まず来年公務員試験を受ける方は、水産基本計画に何が書かれていたかおおざっぱでいいので覚えておくことをおすすめいたします。少なくとも上5つは覚えましょう。


さてこの中で私が興味がある点は①と⑤です。

①ですが資源評価対象魚種を2021年時点ですでに200種程度まで拡大していることに驚きました。2020年119種で80種ほど1年間で追加したわけですからね。水産研究・教育機構は特に大変であっただろうなと推察します。またTACですが現在は8魚種(サンマ、スケトウダラ、マアジ、マイワシ、マサバ及びゴマサバ、スルメイカ、ズワイガニ、クロマグロ)となってますが、今後ロードマップに沿ってブリやマダイ、ヒラメなどのメジャー魚種も追加される見込みです。TACですが指定されますと基本的に漁獲量はMSYベースで漁獲量が管理されることになります。MSYベースで漁獲量を抑える令和12年までに444万トンの漁獲量を達成することが可能な資源量までに回復させるとのことです。この理論だと10年間は漁業者の漁獲量が減る可能性があり、収入も減るのでは?と危惧するところがあります。資源管理が漁獲量増大にどこまで影響を与えるのか10年後が楽しみですね。


⑤ですがこれが理解しかねます。

食用魚介類の自給率を10年後に9割にするということは以下のシナリオが思い浮かびます。

⑤.1 陸上養殖や沖合養殖を推進し自国生産量をあげる。日本の生産量が海外からの輸入量をさらにおおきく上回るようにする。

⑤.2 日本人の魚離れが進み、消費量が減少した結果、国内だけの生産量で自国の消費をまかなうことができるようになり輸入が不要になる。円安のため輸出については増えるため自給率向上につながる。

⑤.1ですが沖合での漁業は燃油がかさむこと、陸上養殖は様々なコストがかかることから生産量増大にあたえる効果はそこまでではないかと予測します(勘です)。そうすると自給率向上の手は⑤.2による悲観的シナリオしか思いつかないのですが、水産庁がどのように考えているのかぜひ知りたいところでございます。

どんな書籍でもそうですが疑問を持ちながら読み続けると、疑問が知識として定着し、試験に出た時にも困らなくなります。国の発行しているものでもドンドン疑問を以て読み進めてください。それが試験合格の近道になると思います。




Study Fisheries~水産系公務員試験対策を中心に~

現在数多くの公務員試験対策本が世に出回っていますが、水産系の対策本は一つもなく、どのように対策していいかわからない人が多くいると思います。ここでは、水産の試験に関する重要テーマや、時事問題などをゆっくり筆者が続けられるペースで紹介していきたいと思います。よろしくお願いいたします。

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